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東京地方裁判所 昭和30年(行)7号 判決 1961年10月25日

東京都港区芝琴平町二番地富士観光ビル五階内

原告

日本商工振興株式会社破産管財人

後藤助蔵

都港区芝新橋二丁目三〇番地アマカスビル内

原告

日本商工振興株式会社破産管財人

高木右門

右両名訴訟代理人弁護士

後藤俊夫

都中央区日本橋堀留町二丁目五番地

被告

日本橋税務署長

相馬邦三郎

都千代田区大手町一丁目七番地

被告

東京国税局長

泉美之松

両名指定代理人 広木重喜

安部末男

津守金次郎

主文

原告等の請求はいずれもこれを棄却する。

訟訴費用は原告等の負担とする。

事実

原告両名訴訟代理人は第一次に被告日本橋税務署長が破産者日本橋商工振興株式会社に対しなした別紙第一目録記載の各課税決定及び徴収決定並びに別紙第二目録記載の更正決定及び課税決定、被告東京国税局長が前記破産者に対しなした別紙第三目録記載の各滞納処分は無効であることを確認する。訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を、予備的請求として被告日本橋税務署長が前記破産者に対しなした別紙第二目録記載の中イ欄下段の更正決定及びロ欄の課税決定を取消す訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として別紙書面(原告主張)のとおり陳述し、

証拠として甲第一号証第二号証の一ないし一二、第三ないし第六号証、第七、八号証の各一ないし三、第九号証第一〇号証の一ないし三を提出し、証人野沢時寛、谷和男、福田好の各証言を援用し、乙号各証の成立を認めた。

被告等指定代理人は第一次の請求に対しては原告両名の請求はいずれも棄却する、訴訟費用は原告両名の負担とするとの判決を、予備的請求に対しては被告日本橋税務署長の破産者日本商工振興株式会社に対しなした昭和二九年度前半期の分に対する課税決定の取消を求める訴を却下する、原告両名のその余の請求は棄却する、訴訟費用は原告両名の負担とするとの判決を求め、原告両名の主張事実に対する答弁として別紙書面(被告の主張)のとおり陳述し、

証拠として乙第一ないし第五号証を提出し、甲第七号証の二、三の各成立を不知と述べた外その余の甲号各証の成立を認めた。

理由

(一)  原告等の第一次的請求について

原告等は被告署長が破産者の支払つた所謂株主優待金を利益の配当と見てなした源泉所得税の課税決定、徴収決定及びこれらを前提として被告局長のなした滞納処分の無効確認を求めているところ、本件株主優待金が被告主張のように利益の配当と見るべきではないとしても被告の右誤りは明白なものとはいえず従つて本件各決定及び処分が当然無効とするのは妥当ではない。何となれば本件株主優待金が利益の配当に当るかどうかは主として法律解釈の問題ではあるけれども右解釈をなすに当つては優待金の性質、例えばいかなる株主に、いかなる条件で交付されるものか等の事実関係の確定が必要でありその事実関係の如何によつて解釈を異にしうる余地があり、本件において右事実関係について当事者間に争ある点もあり不動のものといえないので、右解釈の誤りを明白なものとは謂えないと考える。よつて原告等の本件各決定及び処分の無効確認を求める請求はこの点で失当というべきである。

(二)  予備的請求について

被告主張の却下を求める理由の当店は暫くおいて、原告等の取消を求めている課税決定の内容、課税をなすに至つた基礎の事実関係については大体当事者に争なく右決定が違法なりや否やの争点は本件優待金を法人税益金と見るか損金と見るかの点にあるところ本件優待金を原告主張のように利益の配当ではないとしても、当事者間に争ない事実に証人野沢時寛、谷和男、福田好の各証言を綜合して本件優待金の支払の原因は破産会社と株主との関係に基くものでその額も持株に応じてなされることを認定できるので、原告等主張のように一見破産会社と株主との間の金銭消費貸借に基く支払のように考えられるけれども、株主の持株に応じた支払金を利子ということはできないし、融資申込をなさない代償として支払われる金銭又は資金獲得のために支出される金銭を必要経費とは解し難く、他にこれを法人税法上必要経費と解すべき事情を認めるに足る証拠もないので、これを損金に計上することは適当でなく、本件優待金は隠れたる利益の処分たる性質を有する支出として益金と見うべきものと解するので、この点について原告等の主張は採用できない。

他に右決定に違法な点のあることは原告等も主張立証するところなく、本件全証拠によつても右決定に違法な点は認められず、右決定は適法なものというべきで、原告等の予備請求も亦失当である。

よつて原告等の本訴訟請求はいずれも失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石田哲一 裁判官 下門祥人 裁判官桜井敏雄は転勤のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 石田哲一)

(原告の主張)

第一、破産会社の経歴

日本商工振興株式会社(以下破産会社という)は、昭和二五年五月一〇日設立せられてより以来、いわゆる株主相互金融方式をもつてする貸金業その他を営んできたものであるが、同二八年八月頃のいわゆる保全経済会旋風の影響を受けて、経営の危機を招来し、翌同二九年三月一九日および同年四月三〇日に、それぞれ債権者等から破産の申立を受けるにいたり、同二九年七月八日午前一〇時、東京地方裁判所において、破産宣告を受け、原告等はいずれもその破産管財人に選任せられたものである。

第二、破産会社のいわゆる株主相互金融方式による経営実態

破産会社は、前記のとおり、貸金業その他を営業目的とし、昭和二五年五月一〇日、資本金一〇〇万万円(一株の金額金五〇円、二万株)をもつて設立され、ついで、同二五年六月より同二八年九月頃にいたるまで、一一六回にわたり、継続的に、新商法にいわゆる授権資本にもとづく新株発行の方式による各一〇〇〇万円宛の増資手続を経由し、ついに、資本金として、金一二億円を計上するにいたつたものである。しかして、右増資の手段としては、まず、株式引受人として、破産会社の役員または職員その他を形式的に設定し、株金払込については、いわゆる見せ金、または破産会社の取引銀行を株式払込取扱銀行として、同銀行に対する破産会社の当座または普通預金を株金として、払込保管金(別段預金)口座に振替え、各増資の登記手続完了後、一時借入れの見せ金を返済し、あるいは、もとの当座または普通預金口座に戻入れする等の方法をとり、他方、破産会社はこれに対し、各増資毎に、実質上払込みなきいわゆる空株たる無記名株券を発行し、ついで、本社はもちろん関東地方一円にわたつて設置せられた破産会社の支社あるいは支部または営業所ならびにこれらが雇用する多数の外務員(勧誘員)を動員して、不特定多数の出資者を募集し、同人等に、日賦もしくは月賦または一時払の方法によつて、券面額相当の金銭を破産会社に払込ませ、全額の支払完了後、右株券を出資者等に引渡すとともに、その後三ケ月ないし一年を経過した後、出資金の支払方法および期間の長短によつて異るが、一定の割合による高率のいわゆる株主優待費なるものを、毎月利札同様、破産会社から、出資者宛に支払う旨約定し、あるいはまた、券面額相当の出資金の返還を欲する希望者に対しては、その後、券面額相当の金銭の支払完了後三ケ月ないし六ケ月を経過した後、いつにても、破産会社に対して当該株券を提供すれば、破産会社は、株式譲渡代金の立替払と称して、出資者に対し、券面額相当の出資金の払戻をなす約定をなし、これら譲渡申込にかかる株券については、さらに希望者を募集し、前記同様の方式手段により、出資者の払込を受けるという形式と、新株発行による増資という二元的操作を繰り返していくのである。したがつて、破産会社発行にかかる株式については、実質的かつ適法な株式引受および株金払込の事実はなく、いわゆる株式譲渡代金の払込ないしは回収であつて、はじめて破産会社の営業資金の増加となりうるわけであるが、この場合においても、一時払によるいわゆる株式譲渡代金の決済は少なく、その大部分は、日賦ないしは月賦の方法により、調達せられていた関係上破産会社の営業資金の増加は、これらのいわゆる株式譲渡代金の分割払込が完了することによつて、はじめて達成せられるわけであり、他方、出資応募者のいないとき、あるいは、それが不足のときには、つねに、仮設名義人に対する貸付金名義で、株券が破産会社に保留されていたわけである。

第三、本件課税決定等の対象ならびにその根拠

一、ところで、被告日本橋税務署長(以下被告署長という)は、前項記載のごとく、破産会社が、一定の条件と利率とにより計算し、特定のいわゆる株主に対して、支払をなし、または、支払をなすべき約定いわゆる株主優待費に対し、これを所得税法第九条一項二号同法三七条にいわゆる「配当所得」の概念中に含まれるものとして、その支払者たる破産会社に対し、新規に、源泉徴収の義務と同時に、これを納付する義務を課し、これに対し、別紙第一目録中、課税決定の日欄記載の各年月日に、それぞれ課税決定をなし、これら課税決定にもとづいて、同目録中、右に相当する徴収決定の日欄記載の各年月日に、それぞれ徴収決定をなし、ついで、被告東京国税局長(以下被告局長という)は、逐次、同目録中、右に相当する滞納処分の日欄記載の各年月日に、右租税の滞納処分として、破産会社所有にかかる財産を差押え、かつ、これを公売処分に附してきたものである。

二、つぎに、被告署長は、前記のとおり、いわゆる株主優待費を、所得税法九条一項二号同法三七条にいわゆる「配当所得」の概念中に含まれるものとして、これに対し、源泉徴収の義務を課し、しかして、法人税法上、右株主優先費および源泉徴収税額の支払を、破産会社の損害勘定に繰り入れることなく、すべてこれを益金と認定し、これに対し、別紙第二目録中、課税決定の日欄記載の各年月日に、それぞれ課税決定をなしたものである。

第四、いわゆる株主優待費の性質について

一、前項記載のとおり、被告等は、「株主優待費」を、株式の利益配当所得と認定し、かかる立場にしたがつて、これに対し、課税決定をおこない、その後、徴収および滞納処分を順次なしてきたものであるが、原告等が、本訴において、被告等の右各処分行為が、いずれも無効である旨の確認を求めるべき根拠とするところは、後述のように、「株式優待賞」なるものは、到底「配当所得」とみるべからざること(逆に損金とみること)を、基本的理由とするものであり、したがつて、本件課税決定等の当否を論ずる前に、原告等は、「株主優待費」の性質について、左のとおり、主張するものである。

二、第一に、「株主優待費」とは、前記第二項記載のように、「株主」全員に対して平等に支払われるものではなくして、「株主」中、その払込を完了し、かつ一定の期間を経過したものに対してのみ支払われるものであり、他方、「株主優待費」は、破産会社の利益の有無にかかわらず、「株主」募集の際に、あらかじめ予定された一定の条件と利率とより計算せられた金額を支払う仕組になつており、しかもまた「株券」には社債券の利札同様、優待費なる欄が設けられ、かつ、破産会社の会計年度を無視して、毎月その支払額が予定記入されており、このような意味において、株主または株式とは名ばかりであつて、その実体は、商法上の株式会社の株主または株式の実態を具備したものではなく、要するに、本来、株主権を表彰し、かつ、化体すべき有価証券たる株券は、あたかも、一個の定期預金証書化しているのであり、これに相応して、「株主優待費」なるものも、本来の株式に対する利益配当ではなくして、その実体は、社会経済上、出資者に対する単なる誘致金ないしはリベートであり、出資応募者は、この予定された一定の支払金につられて出資をなすものであり、したがつて、それは出資応募者に対する募集費とみるべく、その本質は、会計学上、費用項目、すなわち損金とみるべきものである。

三、第二に、かりに誘致金またはリベートでないとするも、前記のごとく、「株主優待費」なるものは、一定の現実化した出資金に対して、事業の成否、利益の有無にかかわらず、一定率の支払をなすものであり、しかもまた、出資者たるものは、この一点に着目して出資をなすものであるが、さらに、これらの事実と、以下に述べるごとく、この種破産会社の「株主」の性格とを併せ考えるならば、出資を消費寄託、優待費を当該利息とみるべきである。したがつて、「株主優待費」なるものは、到底株式の利益配当とは称しえないものである。すなわち、前記第二項記載のように、破産会社の原始株式二万株についてはともかく、その余の増資にかかる新株全部については、出資応募者は、破産会社に対して、券面額相当の金銭を、日賦もしくは月賦または一時払の方法によつて支払い、右金額の支払完了後、株券の交付を受け、その後、所定の種別の期間経過後、あらかじめ予定された一定の条件と利率とにより計算せられた「株主優待費」の支払を受けうる約定である。しかして、破産会社は、右方式手段により、破産宣告当時、約金六億二〇〇〇万円の資金を調達してきたものであるが、このうち、「株主」に対して、「株主」相互金融方式による貸付をなした金額は、僅かに、金二〇〇〇万円程度にすぎず、その余の約金六億円は、いわゆるモーロー会社その他資力のない金融ブローカーに対する、大口の不良貸付あつて、他は人件費および物件費その他に費消されている次第である。このようにして、破産会社の現実の営業実績は、資金の無計画、無思慮な運用、いわば乱費と称して程遠からぬ実態を示すものであつて、そこには、一片の利益のかけらさえ追求していない体の状態である。したがつて、「利益なきところ利益配当なし」の原則にしたがい、いわゆる株主優待費を、破産会社の利益とみることは、到底許されないものであり、かような意味において、株主優待費を、前述のように一定額の出資金または預け金に対する利息とみることが、合理的であると考えられる。

四、第三に、かりにしからずとするも、右説述の基本的立論に、左の諸点を加味して、併せ考えるならば、いわゆる株主優待費とは高々所得税法の規定外の利子所得に過ぎないものと解すべきである。すなわち、(1)いわゆる株主優待費は、破産会社の利益の有無にかかわらず、出資金に対して、つぬに一定率の額であり、その結果、蛸配禁止の原則は、常態的に、無視されていること。(2)「株主」としては、同種であるが、その出資の方法および態様によつて、株主優待費の額が異り、これは、株主平等の原則とは、およそかけ離れた考え方に立脚する所以を物語るものであること。(3)破産会社発行にかかる増資株式のすべてが、空株のかたちをとり、「株主」は、日賦月賦の分割払によつて、株式を取得しうること。しかも、その取得は、発行会社である破産会社が、いわゆる抱株(自己株取得)として保有している株式を交付すること、「株式」の処分は、破産会社に対してなされ、破産会社は、利率の有無にかかわらず、これを券面額にしたがつて、受戻しをなし、その結果、必然的に、破産会社は抱株をなすこととなり、自己株式取得の原則に反するのが常態であり、破産宣告当時、この種抱株は、実に、その額面総額が金五億円以上におよんでいるのである。これを要するに株式の観点からみるならば、本件増資にかかる株式のすべては、本来の株式の法的属性をすべて欠缺せるものである。そこで、以上に挙示する諸点から判断しても明白なように、破産会社の実態は、株式会社として保持しなければならない本質的原則である資本充実のための諸規定が、一切無視されているところに、その存在の本質的性格があるのであつて、それゆえに、その株式は原始株を除いて、株式たる経済的かつ法律的実態を何等有せず、「株主優待費」のごときは、さらに、これを上廻つて、株式に対する利益配当とは、およそ異質的な性格を帯有するものというのほかはなく、さればこそ、本件破産裁判所は、「株主」の出資返還請求権を破産債権と認め、破産原因を確定されたのである。ところで、所得税法六条一項二号は、いわゆる「配当所得」として「法人から受ける利益若しくは利息の配当、剰余金の分配又は証券投資信託の収益の分配」を挙示するところからみれば、その法人の利益とは、一定期間の法人の事業の総益金から総損金を控除した額すなわち純益金であることが推知され、しかしてまた、かく解することが、会計学および商法学上の観念とも一致し、かつまた法の統一的ならびに合理的解釈の原則にも一致するところである。しかして、同規定は、「利益若しくは利息の配当」として、利益と利息とを対置し、該利息は、商法二九一条所定の建設利息を指称すること、税法解釈上通説であり、実務上も、そのように取扱われている点から考えると、ここにいわゆる利益とは、商法二九〇条に規定する利益と解するのが正当である。かくして株主相互金融会社のいわゆる株主優待費が出資誘致金でないとすれば、所得税法上、残るところは、同法九条一項一号のいわゆる「利子所得」とみるほかはないのであるが、該規定にいわゆる「預金の利子」とは銀行その他通常の金融機関の預金の利子を意味するものと解すべきであるから、株主相互金融会社のごとき、特殊な街の貸金業者に対する、貸付金または預け金に対する利息は、これに該当しないものといわなければならない。

第五、本件課税決定等の当否について

一、源泉徴収税について

(一) 第一に、被告等は、前記三項説述のように「株主優待費」を、株式の利益配当所得と認定し、かかる立場にしたがつて、これに対し、課税決定をおこない、その後、徴収および滞納処分を順次なしてきたものであるが、前項記載のとおり、「株主優待費」なるものは、出資者に対する誘致金ないしはリベートであるとみるべきであり、しからずとするも、高々一定額の出資金または預け金に対する利息であり、ひいては、所得税法の規定外の利子所得に過ぎないものというべきであつて、到底株式の利益配当とは称しえないものである。したがつて「株主優待費」を、株式に対する利益配当所得とみないしてなした、被告等の破産会社に対する本件源泉徴収税額の課税決定等はその対象たる「株主優待費」の本質と、それが有する社会的かつ経済的意義とを無視し曲解したものであるから、当然に無効である。

(二) 第二に、一歩をゆずり、かりにしからずとするも、「株主優待費」は、所得税法九条一項一号にいう「利子所得」に当るにすぎない、したがつて、被告等が「株主優待費」を同法九条一項二号にいう「配当所得」と誤つて認定し、同法三七条に規定する税率にもとづき、これに対してなした、昭和二八年八月七日以降の本件課税決定等の各処分行為は、左の事由により、いずれも、無効である。すなわち、昭和二八年法律第一七六号「租税特別措置法の一部を改正する法律」によれば、所得税法にいう「利子所得」に対して課する税率は、支払を受けるべき金額の一〇〇分の一〇であつて、この税率は、同法施行の日である同二八年八月七日以降の分について、適用されることになつている。これに反し、「配当所得」については、同法は特別の規定を設けなかつた結果、従前どおり、一〇〇分の二〇の税率による課税を受けなければならない筋合である。したがつて、本件課税決定は、前記日時以降のいわゆる株主優待費については、本来ならば、その支払額の一〇〇分の一〇の税率による課税をなすべきであるにもかかわらず、前記のとおり、被告等は、いわゆる株主優待費を、誤つて、「配当所得」として取扱つた結果、一〇〇分の二〇の税率による課税決定をおこない、これら処分にもとづいて、徴収および滞納処分をなしたわけであるが、右瑕疵は、単に、所得税法九条一項一号と二号との適用を誤つたに過ぎないというようなものではなくして、まさに、本件課税決定を無効ならしめる明白かつ重大なものであるといわざるをえない。すなわち、課税処分の瑕疵が、税率の相異のように、明白かつ重大な違法にあたるときは、その処分は、行政官庁の取消をまつまでもなく、当然に無効であるとするのが、大審院判例(昭和二二年四月二五日、第一民事部判決、租税専売関係判例総覧六五七、六六一)の示すところであるから、「株主優待費」を「配当所得」としてなした、被告等の破産会社に対する本件源泉徴収税額の課税決定等は、前記改正法律の適用された同二八年八月七日以降の分について、当然に無効である。

二、法人税について

被告署長は、前記三項説述のように、「株主優待費」を、株式の利益配当所得と認定し、これに対し源泉徴収の義務を課し、しかして、法人税法上、右株主優待費および源泉徴収税額の支払を、破産会社の損金勘定は繰り入れることなく、すべてこれを益金と認定し、かかる立場にしたがつて、これに対し、課税決定をなしたものであるが、前項説述のとおり、「株主優待費」なるものは、出資者に対する誘致金ないしはリベートであるか、あるいはまた、高々一定額の出資金または預け金に対する利息であり、ひいては所得税法の規定外の利子所得に過ぎず、純然たる損金勘定であり、到底株式の利益配当とは称しえないものである。したがつて、「株主優待費」を、株式に対する利益配当所得とみなし、これに対し、法人税法上、「株主優待費」、すなわち、会計学上純然たる損金勘定を、益金と認定してなした、被告署長の破産会社に対する本件課税決定の誤りは、明白かつ重大なものというのほかなく、本件課税決定は当然に無効である。

第六、右のように被告署長は「株主優待費」を株式の利益配当所得と認定し、これに対し源泉徴収の義務を課し、法人税法上右株主優待費および源泉徴収税額の支払を破産会社の損金勘定に繰り入れることなく、すべてこれを益金と認定し、もつてこれに対し課税決定をなしたものである。しかし従来説述するように本件「株主優待費」なるものは、出資者に対する誘致金ないしはリベートであるか、あるいはまた高々一定額の出資金または預け金に対する利息であり、ひいては所得税法の規定外の利子所得に過ぎず、純然たる損金勘定であり、到底株式の利益配当とは称しえないものである。このような意味において、「株主優待費」を株式に対する利益配当所得とみなし、これに対し法人税法上「株主優待費」、すなわち会計学上純然たる損金勘定を益金と認定してなした被告署長の破産会社に対する本件課税決定の誤りを不服として、原告らは別紙第二目録記載の課税決定中、昭和二八年度分の部分については、昭和二九年九月二〇日附をもつて、被告局長宛審査請求書を提出し、また昭和二九年度分前半期の部分については同二九年一二月二七日、前同様被告局長に対し審査請求をなしたものであるが、前者については、同三〇年一一月一八日附同月二二日到達にかかる書面により右請求を棄却する旨、後者については、同三〇年一〇月一七日附同月三一日到達にかかる書面により右請求を却下する旨の各決定の通知を受けたものである。

よつて、原告らは従前主張した本件課税決定等の無効確認請求がかりに認められないとしても、右両課税決定についてはその取消を求める法定条件を履践しているのであるから、予備的に右両課税処分の取消を求める。

別紙書面(被告の主張)

一、破産者日本商工振興株式会社(以下破産会社と称す。)のいわゆる株主相互金融方式による経営の実態について

(1) 破産会社は、昭和二五年五月一〇日資本金一〇〇万円を以て適法に設立された株式会社であつて、爾来百拾数回にわたり増資を行い、昭和二八年九月四日現在、その資本金は一二億円に達するにいたつた(甲第一号証参照)。

(2) 破産会社は、主として貸金業を営むを目的としているものであるが、これについては昭和二五年六月四日貸金業等の取締に関する法律にもとづいて貸金業の届出書を大蔵大臣に提出し、届出受理書の交付を受けている。

(3) 破産会社が増資をなすに当つては、毎回の募集券面額の総額を一、〇〇〇万円とし、証券取引法第四条の規定にもとづき、増資の都度大蔵大臣に有価証券通知書を提出した後、会社の役職員をして増資にかかる株式を引き受け、払い込ましめて、資本増額の登記を了している。

株券は、一株券面額金五〇円であつて無記名である(甲第一号証参照)。なお原告等は、株券には、社債券の利札同様、優待費欄が設けられていると主張されているが、左様の事実はない(乙第一号証参照)。

(4) 次いで破産会社は、株式を譲り受けて会社の株主となることを希望する者を募集し、株式の売買を仲介斡旋する。

破産会社の株主となることを希望する者は、株式譲受申込書(乙第二号証参照)により申込をなし、株式を譲り受けて破産会社の株主となるのであるが、株式譲渡代金は、自己の手持資金をもつて一時に支払を了することを原則としていた。

しかし、便宜上破産会社から株式代金相当額の融資を受けて譲受株式代金の支払を完了して株主となり、然る後当該融資金の返済を日賦又は月賦をもつて償還することもできる。(営業案内乙第三号証、日本商工振興株式会社約款乙第四号証参照)

(5) 破産会社は、右増資により得た資金を運用して事業を遂行したのであるが、その主たる事業である貸金業の内容についてみると、株主となつた者のうち融資を希望するものに対しその持株の券面総額の三倍(一五万円)を限度として融資する(乙第四号証参照)ほか、一般の融資を希望する会社等に貸付けてその利息収入を得ていた。

(6) ところで、破産会社は、会社の株式を取得して株主となつた者に対しては会社の決算による株主配当をすることは勿論であるが、そのほかに、株式譲受代金を自己の手持資金で支払つたか、または株式譲受代金を破産会社から借り受けたかの別に応じ、一定利廻りの優待費を支払う。此の場合株主たる地位において前述の三倍(一五万円)を限度として破産会社から融資を受けた株主に対して支払う優待費は、この半額としていた(乙第三、第四号証参照)(なお、乙第五号証参照)

二、日本橋税務署長の行つた課税処分

日本橋税務署長は、第一項(6)記載の優待金についてこれを法人所得計算上損金とならないものであり、これは会社の利益処分であつて、所得税法上も利益の配当に相当すると解しているところ、調査の結果破産会社がその支払つた株主優待費(原告提出第五準備書面別紙目録金額のとおり)を法人所得計算上損金に算入処理し、また、その優待金支払の際所得税法所定の所得税を源泉徴収していないことが判明したから、この支払優待金の損金算入計算を否認する法人税の更正処分を行うとともに、支払者たる会社に所得税の源泉徴収決定処分を行つたものである。

三、被告等の行つた処分は、いずれも当然無効ではない。

(一) 税務署長は、納税義務ある法人の法人税について、その課税標準、法人税額を調査して提出された確定申告書の申告額と異るとき更正処分をなすのであり(法人税法第二九条、第一八乃至第二一条、第一条同法施行規則第四一条)、また、税務署長は、支払をなす者が、利益の配当をしているかどうか、その配当所得の支払について所得税法所定の所得税を納付したかどうかを調査し、その条件を具備すると認めた支払をなす者に対して源泉徴収所得税の徴収決定をするのであるが(所得税法第四三条、第三七条、第一条、同法施行規則第六四条)、法人の支出が損金にあたるかどうか、その支払う利益の配当が商法上適法であるかどうか、更に、その法律的、経済的実質が外観上のそれと異るものであるかどうかということは、当事者の意思、契約の実態など諸事実を探究認定した後、はじめて決定し得る問題であるから、そのような点については外観上誰でもがすぐさま誤なく認識判断できるような問題ではない。従つて、本件破産会社が前述した経営方式によつていわゆる「出資者」に対し優待金を支払つている事実に関し、被告日本橋税務署長が、仮に、原告等の主張するように認定を誤つて本来損金たる性質の支出についてこれを否認し、利益の配当をしていない破産会社に源泉徴収所得税の徴収決定をしたとしても、これを理由に取消の問題を生ずるかどうかは別として、それをもつて本件課税処分を無効ならしめるような外観上明白な瑕疵があるということは到底できないところであるから、被告日本橋税務署長のなした本件課税処分は、当然無効ということはできない。

(二) 課税処分は、たとえ違法であつて取り消されるべきものであつても、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものであるから、右課税処分に基く租税の徴収のためなされた滞納処分は、無効ではない。従つて、被告東京国税局長のなした本件滞納処分は当然無効ということはできない。

原告等は、本件課税処分の当然無効を前提として、本件滞納処分もまた当然無効であると主張されるが、本件課税処分が当然に無効でないことは、前述したとおりであるから、原告等の主張は、その前提において誤つているといわねばならない。

四、昭和二九年度半期分に対する課税決定の取消を求める訴について却下を求める理由原告等は破産者の昭和二九年度前半期分について、被告日本橋税務署長において課税決定をしたと主張し、該課税決定の取消を求めておられるが、被告日本橋税務署長は、右課税決定をしたことはないから、原告等の右訴は、取消を求める対象たる処分を欠き不適法であることを免れない。すなわち、原告等の主張される昭和二九年度前半期分法人税額本税一二二万四、四六〇円は、法人税法第一九条第六項の規定により、破産会社から申告書の提出があつたものとみなされ、このみなす申告に基いて算出される税額であるにすぎず、被告日本橋税務署長において何等課税処分を行つたものではないから、課税処分があるものとしてその取消を求める原告等の訴は、不適法である。

なお破産会社の昭和二八年度分法人税について、原告等主張のとおり課税処分があり、これに対する審査請求、審査決定のあつたこと、同昭和二九年度分について、原告等主張のとおり審査請求及び審査決定のあつたことは認める。

五、本件法人税及び源泉徴収所得税の課税処分の適法性について破産者がいわゆる出資者に対し支払つた優待金は、法人所得計算上損金とならないものであり、これは、会社の利益処分であつて、所得税法上も利益の配当に該当するものであるから、被告日本橋税務署長の課税処分には何等違法がない。以下これについて述べる。

一、本件優待金は、法人所得計算上損金とならないものである。

(一) 破産会社は、株式会社であつて主として貸金業を営むことを目的としているものであるが、その貸付資金を得るため累次の増資手続を経て資本金を増大し、これによつて得た増加資本金をもつて資金に充てていたものである。昭和二九年三月三一日現在において二万五、六三一名にのぼる株主等(甲第七号証の一第五項参照)は、会社の増資による発行株式を譲り受けて株主となつたもので、一般の事業会社等 へ 株式投資の場合と区別すべき理由がないものである。

この点について、原告等は各増資の際の払込は、いわゆる見せ金による払込であつたことを理由として「株式とは名ばかり」であり、従つて、「株主とは名ばかり」であると主張されているが、新株発行の無効は、一定期間内に提起される会社に対する訴によつてのみ主張することができるもので、破産会社の各増資による新株の発行について、右各期間内に無効の訴の提起された事実はないから、新株発行自体を無効とすることはできず、見せ金による払込であるため、実際上は未払込であつて、当該株式は失権株式であるといわねばならないとしても、それが広く大衆に売り出され、譲受人を生じた後は、当該譲受株式は、有効化するものであると解するのが相当である。そして譲受人が譲受株式代金を支払うことによつて破産会社の資本は実質的にも充実されたのであるから、譲受によつて株主となつたいわゆる出資者を「株主とは名ばかり」であるとして株式であることを否定することはできない。なお、新株発行の無効は、無効判決の確定によつて、将来に向つて効力を生ずるにすぎないから、それまでの間に新株の発行を前提としてなされた利益の配当は、利益の配当として有効であるといわねばならないのである。

また、原告等は、破産会社は、利益の有無に拘らず、一定率しかも高利廻の優待金を支払うべき旨を出資者との間に約しているから、出資者は株式の譲受によつて株主となつたのではなく、会社に対し出資金を消費寄託したものであると主張されるのであるが、右の破産会社と出資者間の契約なるものは、出資者が株式を譲り受けて株主となることを条件としてその効力を生ずるものにほかならないから、会社と株主との間の契約であるといわなければならない。しかして、その契約は、会社が多大の収益を挙げる見込があり、高率の優待金支払の可能であることを予想してなされたもので、その性質は、会社が株主に対して配当の内払をなすべきことを約した契約であるといわねばならない。

すなわち、破産会社が出資者に対し、利益の有無に拘らず一定率の優待金を支払うべき旨を約している当該契約は、会社と株主間の契約であつて、会社が配当の内払をなすべきことを約した契約であるとみるのが相当なのであつて、原告等の主張されるように、消費寄託契約であると解さるべきではない。

要するに、いわゆる出資者は、株式を譲り受けて破産会社の株主となつたもので、株主以外の者すなわち預金債権者であるということはできず、会社がこれに対し利益の有無に拘らず一定率の優待金を支払うべき旨を約しても、株主を預金者に変更するものではない。

(二) 法人税法第九条によれば、内国法人の各事業年度の所得は、総益金から総損金を控除した金額によることになつている。しかして、総益金とは、法令により別段の定めのあるもののほか、資本の払込以外において純資産増加の原因となるべき一切の事実をいい、総損金とは、法令により別段の定めのあるもののほか、資本の払戻又は利益の処分以外において純資産減少の原因となるべき一切の事実をいうもので右に明かなように、資本の払込、資本の払戻及び利益処分は、法人の損益に関係がないもので、損益に関係のある取引すなわち、いわゆる損益取引と混同されてはならないものである。

資本の払込、払戻は、いわゆる資本取引であり、利益の処分も一種の資本取引として、損益取引と区別されねばならないのであるが、本件優待金の支払は、右のいずれに該当するかが本件での問題である。

破産会社は、貸金業者であるが、その貸付資金を、すでに(一)に述べたように、増資手続による増加資金に求めたのであつて、決して、資金を借り入れたものではない。現に破産会社も出資者からの受入金を借入金として経理しておらず、なお、破産会社が貸付資金に充てるため、社外から借入金を得た事実は認められないのである(甲第七号証の一、貸借対照表参照)。されば、借入のないのに借入金利息を支払うことは考えられないから、破産会社がいわゆる出資者に支払う優待金は、預金利息や借入金利息ではないといわなければならない。

原告等は、優待金は、募集費に該り、損金であると主張されるのであるが、優待金は株主に対してのみ支払われたものであつて、社外の第三者ないし一般公衆に支払われたものではなく、また、前述のように、契約に基いて支払われたものであつても、会社と株主間の契約に基くものであつて、会社と第三者間の会社事業遂行上の契約に基く支払ではないから、損益取引(会社の事業遂行に伴つて損益を生ずる性質の取引)に該るものではないといわねばならないから、原告等の主張するような広告費、宣伝費に該当するものではなく、会計学上費用項目に属するということはできないものである。

優待金の支払は、右のように、預金利息、借入金利息の支払でなく、広告費、宣伝費の支出ということもできず、なお、その他事業遂行に伴い発生した損金に該当するということは到底考えられないものである。

しかして、優待金の支払は、増資又は減資手続による資本の払込又は払戻でないことは明白であるから、結局利益の処分に該当する(このことについては、なお、後述する。)ものである。

右の次第で、被告日本橋税務署長が本件優待金の支払は、損金に該当しないとして、破産会社がこれを損金に計上している計算を否認し、課税処分を行つたことは、何等の違法はなく、その取消を求める原告等の請求は失当である。

課税処分が当然無効でないことについては、すでに述べたが、法人税の課税については、優待金の支払が損金であるか否かは、破産会社の所得額の認定の一資料であるにすぎず、所得金額の多寡の認定は、これを誤つても課税処分を当然無効ならしめないことはすでに最高裁判所の判例であるから、法人税の課税については、この点からしても、その無効確認を求める原告等の請求は失当であるといわなければならない。(最高裁判所昭和三二年(オ)第八五九号、昭和三三年六月一四日第一小法廷言渡判決参照。)

二、本件優待金の支払は、会社の利益処分であつて、所得税法上利益の配当に該当するものである。

(一) 優待金の支払が損金とならないことは前述したが、損金とならない法人の支出を挙げてみると、第一に、減資、合併または解散に伴う資本の払戻又は残余財産の分配があり、第二に、利益の処分たる性質を有する支出すなわち株主に対する利益の配分、会社役員に対する賞与、第三に、特殊な政策目的に基いて損金となさない交際費、寄附金等の限度超過額である。

しかして損金とならない優待金の支払は、右の第一、第三に該当しないことは明らかで、会社役員に対して支払われたものではないから、第二のうち株主に対する利益の配分以外のものに該当しないことが判明する。

(二) 右のように、優待金の支払は、株主に対する利益の配分以外のものに該らないことから、利益の配分であることが明らかであるが、被告等は、すでに、利益の配当とは、資本の払戻の手続によらないで、会社の純資産が出資者の利益のために減少する場合をいうものであることを述べている。しかして、本件優待金の支払は、この場合なのであつて、株主に対する利益の配当に該るのである。

(三) 所得税法上の株主に対する利益の配当とは、商法上適法な配当がなされた場合に限るとの見解があるが、このような見解の誤りであることは、かかる見解によるときは、法人の操作によつて容易に課税を免れるに至ることを考えただけで明らかであろう。

利益の配当であるか否かは、会社から株主に会社の資産を交付する場合、その性質が何かということであり、その性質は、一個不変であつて、会社の操作によつて容易に変更されるものでないことを見落してはならない。

また、商法自体における「配当」も、商法上適法な利益の配当を意味しているのでないことは、商法第二九〇条第二項、同法第四八九条第三号の規定からして明白であろう。すなわち、商法自体も利益の配当の概念を適法、適式になされた配当に限らず、実質的に予定しているもので、その概念は、被告等が前述したとおりのものでなければならないのである。

しかして、このように解することは、租税法律主義に違反するものではない。

(四) 原告等は、優待金は、契約上の義務に基いて支払われるものであるから、利益の配当に該当しないと主張されるもののようであるが、契約上の義務に基くものであつても、株主が会社から減資手続によらず無償で会社資産の譲渡を受ける限り、利益の配当であることに変りがないことは、前述したところから、明らかであろう。

(五) 原告等は、「利益なくして配益なし」の原則があるとされ、破産会社は、終始欠損続きであつて利益を挙げたことはないから、優待金の支払は利益の配当ではないと主張されている。

しかし、配分される利益は、当該事業年度の利益に限らず、過年度の利益の剰余ないし繰越であつてよいし、また、将来の年度の利益であつても妨げないから、利益なくして配当なしの原則が妥当するとしても、本件優待金の支払は、利益の配当に該当するものと解することができるのである。

すなわち、優待金の支払は、それが現実に支払われている限り、会社所得の計算上損金とはならず、常に利益の配当であると解されものであつて、会社の利益は架空のものであつても、また、会社の経営は、赤字続きであつても妨げないのである。

優待金の支払を受けたいわゆる出資者は、出資金に対する対価としてこれを受けているから、利益の配当を受けたものとして所得税を課されることは当然であつて、右所得は、所得税法上配当所得に該当し、雑所得に該るものではない。

(六) 以上述べたところから、被告日本橋税務署長が優待金の支払は利益の配当と解し、破産会社に対し源泉徴収所得税を課税したことには何等違法がなく、その当然無効でないことはもとより、取消事由もないから、原告等の請求は正当の理由がないものといわねばならない。

第三目録(滞納処分目録)

一、差押年月日 昭和二八年一一月二四日

(1) 大宮市大字大宮字大宮三、九一八番ノ三

一、宅地 一〇一坪六合三勺

(2) 同所同番ノ四

一、宅地 七坪二合五勺

(3) 大宮市大字大宮字大宮三、九一八番ノ一

家屋番号 店舗 四区七番

一、木造亜鉛葺二階建事務室 一棟

建坪 三三坪二合

外二階 一九坪

(4) 宇都宮市本郷町二、八五四番地

同町 家屋番号 第二、八五四番ノ二

一、木造瓦葺二階建事務所 一棟

建坪 二五坪八合五勺

第一目録(優待金に対する源泉徴収所得税関係)

<省略>

第二目録(法人税関係)

イ.確定した金額

<省略>

ロ.未確定金額

<省略>

外二階 二三坪一合六勺

附属建物

一、木造杉皮葺平家建物置 一棟

建坪 四坪五合

(5) 宇都宮市本郷町二、八五四番地

同町 家屋番号 第四二番

一、木造亜鉛葺平家居宅 一棟

建坪 一六坪八合

(6) 宇都宮市本郷町二、八五四番地

一、宅地 一三五坪九合七勺

(7) 宇都宮市本郷町二、八五四番地

同 町 家屋番号 第四一番

一、木造杉皮葺二階建 倉庫 一棟

建坪 六坪 外二階 六坪

附属建物 第一号

一、木造亜鉛葺平家浴室 一棟

建坪 一坪

同 第二号

一、木造亜鉛産平家居宅 一棟

建坪 四坪五合

(8) 長野県下伊那郡和田村字丸程一番の一

一、保安林 七町八反五畝二九歩

(9) 同上一番の二

一、保安林 一反四畝一歩

(10) 同上字重作造四二番の一

一、保安林 九反二畝五歩

(11) 同上四二番の四

一、保安林 七畝二五歩

(12) 同上柿の久保一六五番

一、山林 一町九反一畝二七歩

(13) 同上二六五番の二

一、山林 八畝三歩

(14) 同上字柿の久保二六八番の一

一、原野 一町九反二畝一七歩

(15) 同上二六八番の二

一、原野 七畝一三歩

(16) 同上字笛竹八七一番の二

一、山林 一町九反三畝

(17) 同上八七一番の三

一、山林 七畝

(18) 茨城県新治郡石岡町大字石岡字香丸一、〇八〇番ノ六

一、宅地 一九坪一合四勺

(19) 字同同番ノ七

一、宅地 一六坪五勺

(20) 字同一、〇八〇番ノ六

一、木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建店舗 一棟

建坪 二一坪五合外二階二〇坪の内西側

家屋番号 香丸町一〇六番

(21) 木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建店舗 一棟

建坪 一二坪二合五勺外二階一一坪五合

(22) 同所同番ノ七

一、木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建店舗 一棟

建坪 二一坪五合 外二階二〇坪の内東側

家屋番号 香丸町 一〇六番の二

(23) 木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建店舗 一棟

建坪 九坪二合五勺

外二階八坪七合五勺

(24) 千葉市院内町五番地の二

一、宅地 一坪

(25) 同所六番の一

一、宅地 七九坪

(26) 同所九番

一、宅地 五坪

(27) 前橋市堅町六八番地

家屋番号 同町六八番

一、木造瓦葺二階建事務所兼居宅 一棟

建坪 三七坪一合八勺 外二階二一坪八合七勺

(28) 同市曲輪町乙一一三番地の二

家屋番号 同町三〇〇番

一、土蔵造瓦葺二階建倉庫 一棟

建坪 七坪五合 外二階 七坪

(29) 同町一一三番の二三

一、宅地 九七坪三合

(30) 同市堅町六八番

一、宅地 四九坪四勺

(31) 同市桑町三〇番の四

一、宅地 一五坪八合六勺

(32) 横浜市西区伊勢町二丁目九〇番地

家屋番号 同町五七番の三

一、木造ルウフィング葺平家店舗 一棟

建坪 一二坪五合

(33) 横浜市宮元町二丁目二九番地

家屋番号 同町一三六番

一、木造亜鉛葺二階建 居宅 一棟

建坪 一五坪五合 外二階 一一坪五合

(34) 水戸市大町五七二番の八

一、宅地 一六八坪一合九勺

(35) 土浦市字敷島町三、三二二番地

家屋番号 同町二一番

一、木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建店舗 一棟

建坪 二一坪 外二階一七坪二合五勺

(以上甲第二号証の一)

二、差押年月日 昭和二九年一月一二日

(1) 定期預金

記番号 B二九

金額  一、〇〇〇万円也

預入先 三井銀行浅草橋支店

発行日 昭和二八年九月二八日

期日  昭和二九年三月二八日

(以上甲第二号証ノ九)

三、差押年月日 昭和二九年一月一三日

(1) 電話加入権

茅場町局二七〇番

二七五番

二七六番

二七七番

二七八番

二七九番

三一六番

(以上第二号証の一〇)

(2) 電話加入権八本

八王子局 一、五七六番

千葉局  二、四七四番

大宮局  一、五二九番

宇都宮局 五、六六一番

前橋局  三、五四八番

水戸局  四、〇二七番

土浦局  三二番

長者町  六、二一〇番

(以上甲第二号証ノ一一)

(同 一二)

(3) 日立市助川字前内一、八一二番ノ一

一、宅地 七一坪九合七勺

(4) 同所同番

家屋番号 東区二〇三番

一、木造瓦葺平家建事務所兼居宅 一棟

建坪 二八坪

(以上甲第二号証の五)

四、差押年月日 昭和二九年一月一四日

(1) 自動車一台

自動車登録番号  三―七、四七五

車台番号     東五三―二二四東

検査証番号    三一―七、六九四

原動機番号    JAA八四四、四四三

車名       シボレー

形式及形状    五一年箱形乗用

使用の本拠の位置 千代田区神田三崎町一丁目四番地

(以上甲第二号証ノ六)

(2) 自動車

自動車登録番号  三―九、三五七

検査証番号    三一―九、八八七

車名       マーキュリー

形式及形状    一九五三年型乗用

車台番号     五三ME二六五七二M

原動機番号    五三ME二六五七二M

使用の本拠の位置 東京都中央区日本橋久松町二五

(以上甲第二号証ノ七)

五、差押年月日 昭和二九年一月二一日

(1) 土浦市字敷島町三、三二二番

家屋番号 敷島町二一番

一、木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建一棟

建坪 二一坪 外二階 一七坪二合五勺

(以上甲第二号証ノ八)

六、差押年月日 昭和二九年三月一日

(1) 千葉市院内町五番ノ二、六番ノ一、九番に跨る家屋番号

院内町六四七番

一、木造モルタル塗瓦葺二階建事務所兼居宅

建坪 三六坪 二階三四坪

(以上甲第二号証の四)

七、差押年月日 昭和二九年三月四日

(1) 東京中央区銀座東八丁目一九番地四

家屋番号 同町一五六番地

一、鉄筋コンクリート造陸屋根三階建店舗 一棟

建坪 七九坪五合五勺

二階 七九坪五合五勺

三階 七九坪五合五勺

塔屋 六坪四合七勺

(以上第二号証の二)

(2) 三鷹市牟礼字井之頭三八九番八

一、宅地 二三七坪

(3) 三鷹市牟礼字井之頭三八九番三

家屋番号 同所二七二番八

一、木造スレート葺二階建居宅 一棟

建坪 四二坪七合三勺

外二階 二九坪五合六勺

(以上第二号証の三)

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